今日は、南オーストラリアのTAFE SA(職業専門学校)で、1年半学んだ[日英通訳]について書いていきたいと思います。
クラスメートの英語レベルは?
通訳コース受講の入学基準が、IELTS(アカデミックのほう)で、6.0-6.5のため、《話す•聞く•書く•読む》の4技能全てにおいて、ある程度、バランスよく英語ができる人たちが集まります。
僕が受講したコースでは、生徒が10人前後の小規模なクラスでしたが、生徒のほとんどが、すでに《英検準1級》や《TOEIC900点以上》を取得済みでした。
ようするに、日英通訳を勉強するにあたって、【難しい専門用語がたくさん出てきても、ある程度ならついていけるよ!】くらいのレベルと思っていただければ結構です。
やっぱり授業はキツイの?
はい、結構キツイです。。
通訳が必要になりそうな、あらゆるシチュエーションを想定しているため、カバーする分野がかなり広く、覚える単語の量が膨大です。
主な分野とは、
①医学(病名•疾患•手術など)
②法学(犯罪•民事裁判•刑事裁判など)
③教育(主に学校内の問題•いじめなど)
④政治(選挙•政党•政策など)
⑤福祉(失業•転職支援•各種保険など)
⑥観光業(ツアー•交通•宿泊など)
などがありますが、日常はあまり使わない専門用語が非常に多く、1000語以上の新しい専門用語を短期間で暗記する必要があります。
*特に医学•法学系は、覚える量が膨大、コース中でも特に時間をかけます。それだけ、その分野の通訳依頼が多いという証左ですね
授業中は、具体的に何するの?
主に、以下の事柄をやります。
もちろん1回の授業の中で、上の全てをやるわけではありません。授業ごとに、上のリスト内のいくつかをピックアップしていくような形になるのですが、中心となるのは、やはり【通訳実践】です。
1番キツイかつネタの宝庫でもある通訳実践です。
ネタの宝庫(笑)!通訳実践!
通訳実践は、その名の通り、実際の通訳のシミュレーション演習です。基本的に生徒が3人1組になり、2人が役者(用意されたセリフを読む役)、もう1人が通訳者という形で、様々なシチュエーションを繰り返していきます。そして、これがなかなかに大変です。
なにせ、役者のセリフが長すぎです。
以下は、《警官》と《万引き犯》の会話の1例です。
なぜ、万引きなんかしたんだ?
すみません。本当は、そんなことするつもりなかったんです。最近は仕事の失敗でへこんでいたし、妻との関係も上手くいかず、むしゃくしゃしてたんです。
そして、今日、また妻とケンカして、ついカッとなって、家を飛び出したものの、どこへ行くあてもなく、たまたま、このスーパーに立ち寄りました。
好きなワインでも買って、帰ろうとしたのですが、突然家を飛び出したこともあり、財布を忘れてしまったんです。
最初は、取りに帰ろうとしたんですが、あの妻の冷たい眼差しや、最近の仕事の失敗で上司からドヤされたことなど、一気に思い出して、腹が立ってきて、自分の中の何かがプツリと切れ、もうどうにでもなれ!という思いになってしまいました。
そして、気づくと、私はそのワインをリュックの中に入れ、レジを通さず出てきてしまったんです。
いや、長げーよ!!(動機もなんかショボいし)
通訳実践では、小休止なしで、こういう長セリフを一気に通訳させられる場面が頻繁にあるのですが、もちろん通訳者側も、全ては暗記できないため、メモを取りながら聞くことになります。
ただし、メモといっても、全て文字で書いていては、間に合わないため、一部は【文字】の代わりに、自分で即興で作った【記号】を使う場合も多いです。(例えば、ケンカであれば💥など)
なので、長セリフのあとは、通訳者のメモ帳は、文字と記号が羅列することになるのですが、これがまた、自分でも読めません。
なんか文字と記号でグチャグチャになり、メモ自体が 現代アートの作品みたいになってしまい、自分で書いたのに理解できません。
これには最初の頃、本当に困りました。他のクラスメートもみんな困っていたでしょう。
しかし、こんな四苦八苦を経験しながら、みんな成長していくこととなるんですねー、うん。懐かしい。
*最初のうちは、セリフなげーんだよ!と何の罪もない役者役の生徒にも、だんだん腹が立ってきますが、我慢しましょう。いずれ慣れます。
これまたネタの宝庫!野外学習!
TAFE SAでは、通訳授業の一環として、実際の裁判所に訪れます。
*実際に訪れたアデレード判事裁判所(自分も後年お世話になった場所です→また別記事で書きます)
↓2010年のガラケー撮影のため、画像不鮮明ですみません↓
実際の裁判を傍聴し、体験することによって、将来、法廷通訳を依頼された際に役立てよう、という意図なのですが、
これ、簡単に言うと、
オッサン達が裁判官に怒られる様子を永遠と見せつけられるプレイです。
酒に酔ってバーで喧嘩したオッサン、飲酒運転で捕まったオッサン、万引きしたオッサンなど、さまざまなオッサンが登場するのですが、すべからく裁判官からこっぴどく叱られます。
この光景は、大変失礼なのですが、ちょっと笑えてしまいます。緊張と緩和のギャップから笑いは生まれる、と言いますが【逞しい腕にタトゥーが似合うタフガイ!男の中の漢!】と自負してそうな、イカつい外見の彼らが、なんかいっぱい怒られて、最後にひとこと “I’m sorry…” と蚊の鳴くような声でつぶやくのを見ると、その絶妙なギャップに、結構ジワります(唇を噛んで我慢しました)
もし、みなさんも行く機会があったら、手をつねるなりして、耐えましょう。
さて、ちょっとネタでイジリ倒してしまいましたが、真面目な話しをすると、もちろん!裁判所の見学は、実際に使う生きた英語がたくさん学べるため、行く価値は十分にありましたし、貴重な経験になりました。
裁判所がどんな流れで裁判を進めているか、などの前提知識を持っていれば、ストレスもなく法廷通訳に集中できるし、事前の不安も取り除くこともできます。
もし、TAFEで通訳コースを受ける予定の方がいましたら、ぜひ(僕とは違って)真剣な態度で臨んでいただきたいと思います。
ということで、TAFE SAの通訳コースについては、以上です!
それでは、また次回!