前回の記事で、以前オーストラリアに住んでいた時、インド人のルームメイトのラケシュが刺された話をしました。(【怖かった体験】ルームメイトがスーパーで刺された話)
今回はその後日談です。
「1000ドルを貸して」と頼まれ、、
脇腹を刺され病院に運び込まれたラケシュは、一命は取り止めたものの、退院後、勤めていたレストランの仕事を長期的に休まざるをえませんでした。
そうなるともちろん収入もなくなり、アデレードの役所から多少の補助金は出たらしいですが、それも雀の涙のような金額で、すぐにお金に困窮するようになりました。
そして、ある日、ごく自然といえば自然に、親友である僕に1000ドル(オーストラリアドル)を貸してほしいと頼んできました。
ただ僕はちょうどその頃、3ケ月後にアメリカへインターンに行く話が決まりかけており、1年半住んだオーストラリアを離れる準備を始めていました。
その1000ドルもアメリカで生活する資金の一部と考えていたため、結構な痛手でしたが、まあ何はともあれラケシュは親友でしたし、事件が事件なだけに同情する面もあったため、【3ケ月以内に返す】という条件で貸しました。
そして、これが元で、のちに彼とは絶縁することになってしまいます。
一向に戻ってこない1000ドル
アメリカのインターンビザ取得のため、オーストラリアを離れ日本に帰国した僕ですが、ビザの目処もたち、アメリカへの出発日が刻一刻と迫っているにも関わらず、肝心の1000ドルが一向に返ってきません。
オーストラリアを出る際、日本の銀行口座の情報を渡し、いついつまでに振り込むと約束したにも関わらず、その期日を過ぎてもお金が振り込まれないのです。
そこでラケシュにメールしてみると、すぐに返事がありました。
「ごめん!来週振り込む予定だ」とのこと。まあ状況が状況なだけに仕方ないかと思い、もう1週間待ちました。
しかし、約束の期日が過ぎてもまたしても振り込まれません。
で、再度メールしてみると、また前回と同じような回答で、「ごめんごめん!次は必ず振り込む。1週間後に振り込むから」とのこと。
この時点でだいぶ雲行きが怪しくなってきました。
それでも再度信じて1週間待ってみたものの、やはり依然としてお金は振り込まれません。約束の期日を3度も反故にされ、かなり疑心暗鬼になった僕は、この件で、もう通算4度目となる、振り込まれてないよーのメールを送りましたが、今度はなんと無視されました。
で、キレました
友達なんだから、お金が返せないなら素直にそう言えば許してやるのに、毎回口先だけでごまかし、とりあえずその場その場を逃れようとする不誠実な姿勢にものすごく嫌悪感を感じました。
なので、こちらも怒りにまかせて
“このまま借金を踏み倒すつもりなら、お前の住所もわかってるし(同じシェアハウスに住んでたので僕はもちろん知っている)、アデレード警察や弁護士に相談する”という、正直思ってもいないメールを送りつけてやりました。
そしたらやっと返信が来ました。
「あと1週間後に必ず返すから、それだけは勘弁してほしい。というより、もし、警察や弁護士に言ったら絶対に許さない」と哀願なのか逆ギレなのかよくわからない内容。
それでも、まあ返すとは言っているので、(もう5度目になりますが)もう一度待ってあげることにしました。
そして、運命の1週間後、
やはり振り込まれていませんでした。
電話するも、別人だと言い張る
5度も裏切られ、完全にプッツンした僕は、すぐさま彼のケータイに直接、国際電話をかけました。
何か不満をぶちまけないと気が済まなかったのです。
で、彼が電話に出ると、ここまでの不誠実な対応を罵り、今後この問題についてどうするのかを訊ねました。
しかし電話の向こうの相手は、驚くことに自分はラケシュではないと主張します。
「Hey man. I’m telling you I’m not Rakeshu. I’m his friend, Santos. Rakeshu went back to India and can’t contact him at the moment. (なあ、いいか、聞いてくれ、オレはラケシュではなく、あいつの友達のサントスだ。ラケシュはインドに帰り、今は連絡がつかない)」とのこと。
いや、声も完全にラケシュ本人だし、冒頭のI’m telling you もラケシュのいつもの口癖なので、完全なウソだということはすぐに分かりました。電話の相手は間違いなくラケシュです。
なので、それも問い詰めましたが、「いや、オレはサントスだ。ラケシュに言いたいことがあれば伝えておく」の一点張り。もう水掛け論になるので電話を切りました。
本当に疑問でした。金額的に大きいのでアメリカへの準備資金が一部なくなることは、結構な痛手といえば痛手なのですが、実際そんなことはどうでもよく、長い期間ルームメイトで互いに助け合ってきた仲なので(逆に僕が悩みをいろいろ相談して助けてもらったことだってあった)、
非を認めて一言謝れば、返済期間なんていつでもいいから、と言ってあげようと思ってたのに、なんかそういう思いを踏みにじられた感覚がしたのです。
なので、電話が終わった瞬間、あーコイツとも終わったなー、という感じがしました。
その後、お金は帰ってきたが。
結局、僕はアメリカに渡り、JFK空港という空港でインターンを始めたんですが、結論から言うと、ラケシュから返済がありました。
もう諦めていたので、ビックリだったんですが、突然メールで毎月200ドルずつ返すから、今アメリカにいるなら、その銀行口座を教えてくれと連絡があり、当時のバンカメ(バンク•オブ•アメリカ)の口座番号を教えると翌月から本当に200ドルずつ返済がありました。
で、4ケ月後に800ドルが返済されたタイミングで、「残り200ドルはもう返さなくていい。いろいろあったが、今までのことは2人とも水に流し、友達関係に戻ろう」というような趣旨のメールを送りましたが、それから一切連絡がつかなくなりました。
まあ、気持ちはわかります。彼は良い意味でプライドの高いやつだったので、返済に関する僕との度重なる連絡が、プライドを傷つけ、もうトラウマになってしまったのでしょう。
また、自分が刺されて大変な状況にも関わらず、鬼のように返済を迫ってくる僕に対し、なんで分かってくれないんだ?という疑問もあったでしょう。
確かにその通りです。
別にその1000ドルがなくても死ぬわけでもないのに、理不尽に刺されて仕事ができなくなっている相手に対し、その返還を強硬に求めた僕にも、かなりの非があります。
まあ、実際、本当に怒っていたポイントは1000ドルがどうの、という部分ではないのですが、相手にはそう見えるでしょうし、仕方ないかなと思います。
あれから、もう13年が経ちますが、あれ以降お互い一切連絡はとっていません。
たまーに、ふとした時に思い出し、あいつはまだオーストラリアで働いているのかなー、とかインドに帰っているのかなー、と考えるときはありますが、やはり今でも思い出すたび少し心苦しい思いもします。
まあ、何はともあれアイツもどこかで元気にやっててくれれば、と思います。
僕は元気でやってます。
以上です。