ニューヨークでおかしくなり、精神科医にかけこんだ話

【アメリカ】生活編

自分は、ちょっと変な思考のクセがあり、普通、人が悩むべきところを悩まず、人が全く気にしないようなどうでもいいことを深く悩んでしまうところがあります。

で、一旦悩み出すと、本来どうでも良いことなのに、どハマりして抜け出せなくなり、数ヶ月ほど苦しむことになります。

その悪いクセが爆発してしまったのが、航空会社の仕事でニューヨークで働きはじめて2年目のことです。

テレビを見てて突然発症

ある日、シェアハウスの自分の部屋で、ボーっとテレビドラマを見ていたとき、具体的なシーンは忘れましたが「人生なんて生まれた時から全て決まってるんだから」みたいなセリフを聞き、最初は、(んなワケないじゃん)と笑って聞き流していたのですが、ドラマが終わった後、なんかドンドン気になってきたのです。

よくよく考えると、本当に人生というのは、最初から最後まで、一挙手一投足、物理的に全て決まってるんじゃないのか、と。

だってそうじゃないですか?

例えばパチンコで発射された玉は、発射された時点で、どこに落ちるかは未来のことながら確定しているはずです。

打ち出された力の強さ、玉の速度、角度、空気抵抗、気圧など、おそらく数億個以上の多くの要素が複雑に絡み合い、落ちるベくところに落ちるはずです。(途中で地震が起きたら、とか、誰かが台を叩いたら、、というのも、それぞれに確固とした発生要因があるため、数ある要素の1つです)

要するに、現代の技術ではそれらの計算が到底不可能なため、ある1つの事象に対して未来が決まってないように見えるだけで、自然摂理の中では、確定しているんだ、と思ったのです。

そう考えると、現在の自分たちは、宇宙の始まりであるビッグバンの衝撃の残渣であるため、さっきのパチンコ玉と同じように、ビッグバンが起きた時点で、「物理的に全ての未来の物事は確定している🟰全ての生物は自由意思がない」ということになります。

ということは、今まで自分が自由に考え行動してきたと思っていたのはただの幻想で、実際は自分たち生物は、全てただのロボットと同じじゃないか、とだんだんと危ない方向に考えが飛躍していったのです。

そして、それが怖くなったのです。

全部決まってるなら、生きてる意味ないじゃん‼️自分たち生物は、厳密に言うと意思を持たないロボットじゃん、怖いじゃん‼️と。

バカなヤツだ、と思われるかもしれませんが、当時は考えれば考えるほど、深みにハマって抜け出せなくなり、どんどん辛くなっていったのです。

こうなると、もうどうにか、誰かにこの自分の変な理論を否定してほしくなり、当時、付き合っていた彼女に相談してみましたが、「なんかよく分かれへん」と言われ、

じゃあネットなら自分を否定してくれる情報があるんじゃないかと、よせばいいのに、いろいろ調べてしまったのが、さらに失敗でした。

なんか、昔の哲学者のデカルトという人とかが同じようなことを言っていたり、フランスのラプラスという数学者が【ラプラスの悪魔】といって、僕の理論とかなり近いことを200年くらい前に発表しているのをウィキペディアで見つけてしまい、またさらに恐怖に襲われます。

で、一人でちょっとパニクっていると、彼女が「ちょっと最近様子おかしいで。ミッドタウンに良い精神科のクリニックがあるらしいから行ってみいや。ついてったるで」というので行って見ることにしました。

精神科のクリニックへ行くが。。。

さっそく次の週にそのクリニックに行きました。アメリカでは健康保険がほとんどなく、医療費は高額なため、後にも先にも医療クリニックに行ったのはその1回こっきりです。

マンハッタンのミッドタウンにあるそのクリニックは近代的なビルの20階にありました。(今回名前は伏せます)

入ると花瓶が置かれたホテルのような綺麗なロビーに通され、受付を済ませました。しばらくして名前を呼ばれ、診察室に入ると、優しそうな女性のドクターが迎えてくれます。部屋は、いかにもアメリカのクリニックらしく、茶色の大きな本棚が置かれ、そこにたくさん本が並んでおり、ドクターの賞状みたいなのもたくさん飾ってあります。

で、いよいよ診察が始まり、ニュージャージー出身だというその先生にいろいろと症状を聞かれ、説明したのですが、上手く伝わりません。

そりゃそうです。

まず、不安になっている原因の理論を説明するために、パチンコのくだりから始めたのですが、アメリカ人はそもそもパチンコを知りません。

なので、最初は本来全く関係ない《パチンコとは何か》の説明からするハメになり、

その後も、《ビッグバン》だの《ラプラスの悪魔》だのと、いろいろと続けていきましたが、もうなんか明らかに、さっきまで優しそうだったドクターの表情が曇っていきます。「この日本人はいったい何を言ってるの?」という感じになってしまいました。

まあ、自分でも、こういう反応はある程度予想はしていましたが、やっぱりこれは精神科医にはキャパオーバーな内容です。

なので、その辺りの説明はやめて、なんか不安を和らげる薬を出してくれ、と言うと、すんなり出してくれました。

抗不安薬かなにかだったと思います。10日間分処方されました。

まあ、そんな感じでロビーに戻り、会計を待っていましたが、その後名前を呼ばれてビックリ。

なんとたった15分くらいの診察で、250ドルも取られてしまいました。

ある程度高いことは予想してましたが、予想を超えてきます。

アメリカよ、早くちゃんとした国民保険を作れ‼️

その後

その後、薬を飲んでみましたが、一般的な鬱や不安症の類いではなさそうだし、特に効かないと思い服用を止めました。

それでも半年くらいで自然に治りました。治るというか、そういうことを考えても全然気にならなくなりました。

まあ、自分には5-6年に一度そういう変な思考に陥ることがあるので最近はそういうことがあっても以前のように焦らなくなりました。

もっとも、今回の件は、すでにアメリカを離れて久しい現在、振り返ってみると貴重な経験だったのかな、とも思ったりします。

今回は以上です。それでは、また次回!

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